
STUDIO Y.E’Sさんの建具
すっかり年末ですが、実はとっくの2ヶ月ほど前に我が家着工! 地鎮祭、擁壁作り、基礎工事まで終わって、つい先日上棟式をしたばかり。 それにしても、着工までも結構かかった。

地鎮祭(10月5日)この日より着工!
崖物件なだけにやっぱり擁壁がもうちょいかかるかもとか、そうすると今度は深基礎をもうちょいなんとかしないととか、細かい修正を空いてる時間をつきあわせて設計士の遠山さん(名前解禁!)と詰めていき、それがまた週に1日くらいしか合う時間がないもんだから、ほんの1時間の打ち合わせでも数週間かかってしまったりする。
とはいえ物理的な利便性とデザインのバランスをとっていくのはちょっとそういうことを顔をつきあせてやらないとしょうがない。よくメールとか電話でいいなんていう人がいるが、どうもそういう微妙なニュアンスっていうのはやっぱり顔見て話さないとダメだったりする。一生一度の自宅建築なんでその辺りにかかる時間は致し方ない。 そんなわけでやっとこさ確認申請に至り、着工! と思ったらここからはむしろすごい早くて今やもう屋根もできようとしている。

上棟式(11月13日)翌日
同時進行で探していたキッチンや家具関係は、やはり上野原に工房を持つ「STUDIO Y.E’S」さんに決まる。当初は、テーブルやら椅子も無垢の木をそのまま使ったようなものがいいといろいろ探したが、何しろ”無垢”とか”天然”とか”無害で持ちがいい”とかこだわりはじめると高い。
藤野にも素敵な工房がいくつかあって「これいいじゃん」とか言って値札を眺めてみると大体予算の倍とかしたりする。ネットで探してもなおさら高い。いっそIKEAのそれっぽいのでいいかもとか思ったがしかし、やはり詳細に藤野近辺を探しいくつかの小さな工房を発見。
まずは電話で「無垢材でつくって予算はこのくらいで…」なんてことをやってたのだが、やはりYESさんだけが遠山さん同様「それはやり方でできると思いますよ」とさらりといきなり電話口で一言。HPもなく、ブログ記事のリンクだけを辿って連絡したが、まずは会って話しを聞いてみることに。

YESさんとの打ち合わせも数回。息子も何かと参加したがる(笑
即日上野原の山奥、秋山の山間の工房へとお邪魔した。
ミーヤンさんとパートナーの有馬さん息子さんと3人の顔を見た時から、おやおや何かこの感じ知った雰囲気だぞとさぐりさぐり聞いてみればなんと間接的な知人であったことが判明。
息子さんは、妻がダンサーとして参加していた旧牧郷小学校で毎年行われていたフェス『ひかり祭り』のスタッフで「ベリーダンスやってるんですか? じゃあ、ヨシエさんとかの…」「あ、わたしヨシエです!」という具合。
僕が牧郷ラボでリキッドライティングチームのオーバーヘッズの助川さんと1部屋借りてる話をすれば、奥さまのミーヤンさんは助川さんと以前に僕が取材させて頂いた忌野清志郎や松田優作を撮られていたロックなカメラマン井出ジョージさんの奥さんたちと仲良くしているという。
これは何かの縁かもしれないと感じつつ、どんなものをつくってくれるのかと、サンプルをipadでスルスルとフリックしながら見せてくれる。場所は、木で囲まれた山小屋なもんだから、ちょっとipadを使ってる様子が奇妙にも思える。しかし、どれもこれもステキだ。おまけに予算を聞くと全然高い値段ではない。安くもないが、普通のキッチンとか家具と同じくらいの値段で買えると来た。すべてオーダーであるにも関わらずだ。通常オーダーってのは普通の家具の3倍くらいはするもんだ。
こんなところは他にないですよと聞いてみれば、ご主人。こういう無垢材の良いものを高く売らないというのも彼らのこだわりのひとつだという。何でそんなことができるのかと言えば、彼らは自社で製材所を持ち、木を育てて切ることから内輪でやっているからなのだ。
要するにA5和牛のハンバーグをお手頃価格で食べれる「ミート矢澤」のハンバーグと同じ仕組みだ。ミート矢澤のハンバーグが大人気になったのは元々ミート矢澤が肉の卸をやっていて、原価で良い高級肉を仕入れられるため、売値もそれなりに良い値段で抑えられるというところにある。実は今回建築を担当してくれる「角屋ハウジング」さんもこの”ミート矢澤方式”でさまざまなものを自社で行っているため、いろいろな部分で安く済む工夫がされている。僕は基本この手の安いわけでもないが、それなりの値段の割にいい仕事をしてくれるもの全般が凄い好きだ。いやまぁ、そりゃ高くていいものはいいに決まっているし、ここぞと言うところはもちろん高くていいものが欲しいんだが…。何しろ自営業の小銭持ちくらいの収入の自分からするとその辺りのバランスは不可欠なのである。そう言った意味ではY.E’Sさんは僕らのような輩にとっては救世主のような存在なのだ。

工事の様子を見る都度、息子と藤野近辺の自然を探索。河原、山の中、廃墟の公園などなどいくつか遊べる場所を見つけた。
何よりも彼らののこだわりは家具も地産地消にこだわるということ。食の地産地消というと、その場でつくられたものをその地で食べるということだ。そうすると地域社会が潤うことや輸送料がかからず安く済むこともあるのだが、何よりもその場でとれた食べ物にはその地域の微生物や土が含まれているので、それを食べることによってその場の動植物に対する耐性のようなものができるという話を以前に農業の宝島ムックをつくった時に聞いたことがある。平たく言うと蚊にさされてもアレルギー反応が起きず、痒くならないとか、病気になりにくいと言う話。例えば、その地の蚊はその地の水や微生物を含む血を吸って栄養にして育ち、同じくその地のものを食べた人間もまた同じ成分を体に取り入れているので耐性ができて蚊に刺されても腫れないのだとか。
それと同じようなことが家具や家にも言えるのだと言う。そもそも家具も木でできているので、その地の木はその地の気候に合った育ち方をしている。湿度や温度の変化に適するように育ってきているので、その地でとれた木は家具になっても当然湿度や温度に左右されにくい。

STUDIO Y.E’Sのチラシ
ミーヤンさんによると以前に米国産の高級オークだかで家具をつくったら、意外や安易に乾燥で割れてしまったり、湿度で閉まりが悪くなってしまうようなことがあったという。
家でいえば柱の向きは、できるだけ木が立っていた向きと同じようにした方が湾曲しないんだなんて話も聞いたことがある。もちろん輸送量が安く済んだり、製材を自社でやることによるコスト削減も大きな+要因でもある。
そんなこんなでそれじゃあ、なんなら床とかデッキとか階段とかもY.E’Sさんの無垢材でやってもらった方が統一感も出るし、クオリティもあがるし、値段も集成材とさしてかわらんのじゃないかということになってあれやこれやをY.E’Sさんに頼むことに相成った。本当なら全部無垢材で家をとも思っていたのだが、その辺はやはり予算とこだわりの妥協点としても最高だった。

バルコニーからの眺望
ギャラリーや事務所で拝見した椅子や机の無垢の質感をそのままに生かした丸みのある家具を見て自分も妻も一発で惚れ込み、マルチな設計と抜群のセンスを持つ遠山さん、速く安く柔軟な対応力を持つ建築の角屋ハウジング、オーガニックなこだわりをコストをかけずに実現してくれるSTUDIO Y.E’S という三つ巴で我が家はいよいよ着工した。遂にやっと家が建つ。
次回は、妥協とこだわりの狭間でなんとしてもこだわりたかったドアと表札をお願いする彫刻作家さん中里エロスさんんを紹介します。