月別アーカイブ: 2017年7月

カメラマン×ダンサーの自宅建築録②土地の購入&誰に施行を頼むか?

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さて、住む地域が決まったら今度は、具体的な土地探しと施工者をどうするかである。

実は2017年7月の現時点でもうすでに土地が決まり、まもなく着工に近づこうとしているんだが、せっかくなんで時系列に書いていこうと思う。

 土地に関しては、ネットの@ホームやらSUUMOやらの不動産検索でデータを隅から隅までチェック。土地の大きさ、駅からのアクセス、周辺の環境なども勘案して探しまくる。ネット検索だけでは見落としがあるに違いないと、地元の不動産屋も数件電話したり回ったりした。

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名倉地区からの景色

 藤野という場所の特性上、駅からそんなに遠くないなと思っていても、実際は一山越えないといけないとか、もの凄い急勾配の先に土地があったりとかして、やはり不動産情報だけで見るのと実際に行って見るのとではかなりの違いがあった。

 その中でも駅からのアクセスも悪くなく、見晴らしも最高の物件を発見し、ここで決めようとしていた物件があったのだが、住宅ローンの関係ですったもんだしていたら冬になり、その時点で同じ土地を見に行ったら思いのほか冬の太陽の日照角度の関係で南向きの山が影になり、どうやら冬は昼時に太陽が隠れてしまいそうだった。
毎回藤野には中央道で行っていたが、高尾山を越えると急に空気が変わり、キレイにもなるが、寒くもある。山の気候なんだから間違いなく冬場は日当りが悪ければ相当寒いだろう。

 そんなわけで、またまた振り出しに戻って考えなおし、南向きの日照を忘れることなく重点を置いて絞り込み、やっと今の土地に決めることができた。このプロセスだけで半年以上かかったように思う。

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自宅下の湖畔

 場所は国道沿いで今までで一番広く、崖になっている分だけ価格も安かった。国道沿いだとクルマの往来が激しくうるさいのが難点だが、崖側はちょうど隣の家の擁壁の下になって思いのほか静か。

 南向きが相模湖なんでびっくりするくらいの絶景で、日当りは間違いなくいい。崖下は住宅しかないので往来は少ないし、自宅の崖下から湖畔まで1分でいける上、子どもを連れて浜遊びもできそうな地域。春には山の鳥のさえずりと新緑の山、空には鳶が滑空している。夏には相模湖の花火大会が庭から眺められる。相模湖でボート遊びも楽しそうだ。

 土地も広いので国道沿いと崖側で分割し、崖側に自宅、国道沿いには将来的に妻のスタジオ兼自分が何かしらの店舗をやれるくらいの余裕がある。僕らのような自営だとそういった余地も充分にあることも大きな決定要因になった。

 施工を誰に頼むか?

 そんなわけで先だっての土地の購入に至ったのだ。そして、本題の施行をどうするかなのだが、これも実は土地を決めてからというわけにはいかない。住宅ローンを使うことを前提とした場合、施行に関しても土地の購入の段階で施工主をおおよそ決めておかなければならない。何故なら、図面やら概算見積もりをローンの審査で提出しなければならないからだ。

 だから、実は土地を探すのと同時に施工主を探し、そもそもどんな家にするかも決めていかなかればいけない。ざっくり言うと施工者の候補は3つある。

ハウスメーカー・工務店・設計士

 ハウスメーカーはいわゆるモデルハウスがあってそのモデルにのっとった素材や設計方法、デザインを決められる。メーカーによって趣向が違うのでとにかく安くて定番のところ、自然素材の家、とにかく安心安全で高級感のある家などさまざま。

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BESS 程々の家

 我が家は原則できるだけ木をたくさん使った山小屋のような家が良かったので北欧住宅やらBESSなどがつくる家もいいなぁ、なぞとモデルハウスを覗きつつ思っていた。しかしながら、よくよく家のことを知るにつれ、ハウスメーカーだと安くてデザイン性が高いと思っていても一番大切な基礎やら柱がギリギリのつくりでちょっと心もとないところが実はあったりする。また、大手ハウスメーカーは小規模な工務店などよりモデルハウスやら営業マンやら広告でかかっているコストが高いので当然のことながらそれらのコスト分が上乗せされてくるように思える。

 そうすると、安くてそれなりに基礎や柱も長期的に見て丈夫で、かつ自分たちが求めるような素材やデザイン性を求めると中小の工務店か、それらと提携する設計士の方がいいということになる。

 しかし、難しいのはそれら中小の工務店や設計士はホームページはあっても検索の上位にひっかかってくれないので見つけ出すのは非常に難しい。実際、見つけ出した武蔵野地区の自然素材をウリした木材屋がやっている中規模な工務店に見積もりを出してみると割と悪くない体裁だった。でも、もっとベストチョイスがあるのではないかと他の方法も探ってみた。

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調べる・足を使って聞く

 こういう時に編集記者の原則である「調べる・足を使って聞く」という基本的方法論が意外と役にたった。まず、藤野に行くと必ず寄る芸術の家の上にあるカフェ「笑花食堂」の人の良い店主であるキーちゃんに聞いてみた。彼女ははじめに行った時からきさくに話しかけてくれて、家を建てる話もなんとはなしにしていた。そこで、具体的に設計士や工務店を探している話をすると彼女が元働いていた場所である「shu」というカフェはアーチストから建具屋まで藤野のさまざまな情報が集まる場所であるという。そして工務店や設計士さんの知り合いもたくさんいるはずとの話。そこでキーちゃんに「shu」の奥さまを紹介して頂き、見事地元の設計士さんと工務店に行き着いた。

この「shu」というカフェ、センスの良いギャラリーも併設していて、カフェ自体のデザインや施行も美しく、カフェの裏手でつくっている無農薬野菜を使った料理も最高に旨い。まさに藤野の名店というにふさわしい場所だと思う。藤野に来た際には「shu」と「笑花食堂」はおススメのカフェだ。

 紹介された設計士T山さん(確認して本名もそのうち…)は、元は都心の設計事務所に勤めていたという方。彼もまた僕らと同じく調布近辺に住んでいたが、自宅建設を機に藤野に越してきたという。田舎に住んでいる人には珍しくハキハキと滑舌がいいので都会で仕事をバリバリと仕事をしてきたのであろうなというのが話ぶりからもわかる。

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つくりたい家のサンプルとして提案した和洋折衷の洋館。

 都心のビルとかいかにも高級な邸宅の設計もやっている人なので、果たしてうちのような低予算のわがままにつきあってくれるのだろうか… と不安に思いつつも意外やひとつ返事で「やりかたじゃないですか?」と答えてくれた。

 ああ、この人スゲー仕事できる人なんだろうなぁ、というか仕事のやり方の気が合いそうだなぁと思った。実際、自分もこの言い回しをよく使う。なぜなら工夫をしっかりと凝らすことこそ、景気のよくない現代を個人経営で生き抜くための常套手段だと僕は思っているからだ。

 自分で言うなら出版不況の今という時代において、今までとやり方を変え、人海戦術を駆使したり、つくり方に工夫をすることで生き残っているのと同じようなことだ。
ムックや本をつくる際に出せる予算は、よほどのカリスマ編集者がいるようなところをのぞいて、ざっくり言うと200万から100万以下に減り、多くの製作会社が無理だと文句を垂れながら潰れていくなか、生き残れたのは恥も外聞を気にせずページ数を減らし、会社の規模も小さくし、内省を極限まで行ってもできるだけ良い本にし、利益を出す工夫を考えてきた人たちだけのように思う。

 そうした工夫は大きなコミュニティがなくなり、いかにして中小規模のコミュニティにモノを売るかという現代のあり方に対峙しようという際に必要不可欠なものだと僕は思っている。

 しかもこのT山さん、流石都心の設計事務所に勤めていただけあって、建築関係に関する知識も豊富で住宅ローンを組む際に有利になる「長期優良住宅」をはじめとする事柄にも詳しく、自宅もステップハウスという山のある地域ならではの段々畑のようなモダンな家を建てており、かつ地元でのコネクションもしっかり築いており、この地区で建てるならば間違いなく対応力に長けているのだ。とにかくこの人に頼めば臨機応変にさまざまな願いに対応してくれそうに思えた。実際買った崖という特性のの土地もこの人ならなんとかできるに違いないという前提ありきで買ったのだ。

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「ステップハウス」T山邸じゃないよ

また、設計士さんに依頼すると有利な点は、必ずしも工務店を限定しなくていいことにある。工務店に頼むと大抵自社専属の設計士がいるか、自社で簡易の設計図をつくり、つくり方も平凡なものか自社独自のこだわりのあること意外のことはやってくれなかったりする。設計士ももちろん、デザインの得意不得意はあるのだが、つくりたい家の様式や予算次第で頼む工務店を変えることができる。つまり、設計士に頼むと割と融通が利きやすいという利点があるのだ。ただし、設計料が工務店に頼むよりちょい高めになるが、坪単価が高めの工務店に頼むよりは全体として割安にできるというようにも思う。つまり、坪単価は平凡な家をを建てる工務店並だが、設計士のセンスで通常なら坪単価がもうちょい高めの工務店に頼むような家を建てようという考え方である。
実はもうひとつ木の家を建ててくれる工務店さんもいて、そちらも素敵なセンスの持ち主で値段はともかく自分で切った木で良い家をつくりたいという良い意味で骨太な家をつくってくれそうな方だったのだが、住宅ローンの条件を満たすことができない諸事情があり、断念せざるを得なかった。

 そんなわけで設計はT山さんにお願いし、やっとこ工務店の見積もりがあがってきたというのが我が家の現在地。これからさらに削れるところや外せないことを絞り込んでいく。そんな合間に上野原で地産地消の木材を使う建具屋さんに出会い、これまた素敵な出会いだったので、そこらあたりはまた次回!!